【書評】金採掘者たちを採掘せよ!『ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル』野口悠紀雄
概要
ゴールドラッシュの始まり
ゴールドラッシュの時代にゴールドを掘って成功した人はいなかった?
カリフォルニアでゴールドが出たという噂はすぐに広まり、アメリカ全土からカリフォルニアへ大勢の人が集まりました。
48年にゴールドが発見されて、49年にはほぼ掘りつくされました。それにも関わらず、50年を過ぎても、人々はゴールドを求めて続々とカリフォルニアに集まってきたのです。
そうやって集まってきた人たちは、ほとんどゴールドを掘り当てることができませんでした。
面白いのは、ゴールドラッシュの時にゴールドを掘って成功した人は一人もいないということです。
つまり、この言葉にすべてが集約されています。
“Mining the gold miners”
ゴールド発掘たちから発掘せよ!
カリフォルニアで成功した人は、ゴールドにつられて集まってきた人たち向けに、何かをやった人たちでした。
金採掘者向けに衣料を提供した、リーバイ・ストラウス
一番有名な人は、リーバイ・ストラウス。金採掘者は、ズボンがすぐ汚れたり破けたりします。
だから、丈夫なズボンが欲しかった。
それを提供したストラウスは大成功し、今でも「リーバイス」として存在しています。
情報をイチ早くつかんだ、サム・ブラナン
彼は、ゴールドが見つかったという情報をいち早く仕入れてから、西海岸中のテント、スコップ、日常品を全部買い占めました。
買い占めた後に、町中を走り回って、「ゴールドが出たぞ!」という情報を無料で提供したのです。
ブラナンによって、ゴールド発見の情報が全米に広がり、カリフォルニアに人々が集結。
その結果、ブラナンが買い占めたテントやスコップが高騰して、彼は大儲けしました。
この時期にカリフォルニアで成功した人たち
肉加工業者アーマー社を創業したフィリップ・ダンフォース・アーマーも有名です。現在でも、世界最大の肉加工業者としてアーマー社は存在しています。
駅馬車で西海岸からゴールドを輸送したヘンリー・ウェルズと、ウィリアム・ファーゴ。彼らのウェルズ・ファーゴ社は、2017年現在では、銀行業を展開し、アメリカ西海岸最大の銀行となっています。
成功した人は、誰一人としてゴールドを掘ってはいないのです。
彼らは、「ゴールドを手に入れる」というゴールではなく、「大成功したい!」というゴールを掲げていたからこそ、ゴールド発見の情報に振り回されずに大成功できたのではないでしょうか。
ちなみに、ゴールドが発見された土地を所有していたサッターは、生涯に渡ってゴールドの所有権を巡る裁判闘争を繰り広げ、不幸な人生を送りました。「ゴールドを手に入れたい」という誤ったゴールを設定してしまったのでしょう。
ゴールドラッシュの本質とは?
この時代、アリフォルニアという地になぜ成功者が量産されたのか?
それは、ゴールドをきっかけに意欲のある人たちがアメリカ中から集まってきたからです。
そのほとんどは20代で、街は活気で溢れ、彼らは成功を目指して頑張っていました。
しかも、そこには、すでにゴールドラッシュで成功した人たちがいて、豊かな暮らしをしていて、彼らを間近で見ることができ、臨場感のある憧れを抱くことができました。
また、成功を目指すもの同士の情報交換も活発で、お互いに刺激しあい、成長していきました。
そういう環境下にあったからこそ、カリフォルニアではこの時代に成功者が続出したのです。
まとめると、
「熱狂状態のカリフォルニアで、意欲のある人たちが、様々の新しい事業に着手した。」
というのが、ゴールドラッシュの本質です。ゴールドはあくまでも、意欲ある人たちを集める媒体でした。
で、これが、なぜIT革命に繋がっていったかというと。。。
ゴールドラッシュで最も成功した人たちは、”The Big Four”でした。
実現不可能と言われていた「大陸横断鉄道」を作った人たちです。
大陸横断鉄道によって、これまで馬車で6ヶ月、1100ドルもかかっていた大陸横断が、6日と70ドルになりました。
しかも、死の危険もなくなり、夜も快適に眠ることができる。
当時、ものすごいイノベーションだったわけです。
“The Big Four”の名前を挙げてみます。多分一人しか知らないと思います。
- チャール・クロッカー
- コリス・ハンチントン
- マック・ホプキンス
- リーランド・スタンフォード
そうです、スタンフォード大学で有名なリーランド・スタンフォード。この人がスタンフォード大学の創立者です。スタンフォードは、この地にスタンフォード大学を設立して、ゴールドラッシュの時の精神を後世に受け継いでいったのです。
そして、100年後にITの波が今にも始まるというタイミングがきます。スタンフォードの卒業生が何か仕事を探す時に、当時の学長は、彼らをカリフォルニアに留まらせ、起業させます。
「スタンフォードの広大の土地を貸すから、卒業生はここで起業しろ。金も投資してやる!」
といって、どんどんIT起業家を作っていったのです。
スタンフォード大学の敷地面積は、世界最大の8800エーカー。山手線の内側の面積の50%以上にも及びます。この広大かつ限定された土地に、意欲のある若者がITで起業し始めます。そうすると100年前のゴールドラッシュの時代と同じことが起き始めます。
それが、ITの発展に繋がっていきました。
ヒューレット・パカード、シスコ・システムズ、サン・マイクロシステム、そして、グーグル、アップル、フェイスブック。数ある巨大企業がサンフランシスコから生まれたのです。
1848年にカリフォルニアで起きたゴールドラッシュ。その時代の起業家精神を受け継いだスタンフォード大学。そして、シリコンバレーの起業家たちとIT産業の発展。これらは密接に結びつきました。その結果、現在は、世界中をゴールドラッシュの精神が蹂躙しているのです。
まとめ
この一連のストーリーは、私たちがキャリアを選択する時に、重要な示唆を与えてくれます。
「熱狂状態のカリフォルニアで、意欲のある人たちが、様々の新しい事業に着手した。」
これが、ゴールドラッシュの本質でした。
この熱狂状態を分解していくと、4つの要素が浮かび上がります。
- 人的接触:カリフォルニアという限られた空間に、意欲のある人が集まることで、お互いに刺激を与え、高め合う空気感が生まれます。しかも、そこでは様々なビジネスに関する情報交換がなされました。
- 展示:ゴールドラッシュによって成功した人の優雅な暮らしを目の当たりにすることができ、それが成功への強烈な憧れを引き立てました。
- 若者:ゴールドラッシュでカリフォルニアに集まったのは、20代の若者がほとんどでした。体力、精神力、意欲共に充実した人たちでした。
- 自由:東海岸からもっとも離れたカリフォルニアは、法整備は整っておらず、また、既得権益を持った権力者もいませんでした。だから、制限なく好きな事業に取り組めました。
これは、スタンフォード大学の周辺で卒業生がIT起業するときも、まったく、同じ条件が整っていました。ゴールドラッシュの精神から始めるイノベーションが世界を変えていく時代です。
その精神は、これから私たちが転職やキャリアチェンジを考える時には、無視できない要素になるでしょう。
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